添練ワンドロアーカイブ

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お題:『お土産』

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「それ、お気に入りですね」
 犬がニコニコしながらお手入れしているのは、オレが買ってきてやった犬のぬいぐるみ。焼き菓子セットについてきた、ありふれたものだ。
 犬はそれを時たま取り出し、丁寧にブラッシングしてはまたしまう。その目は本当にキラキラしてて、少しオレには鬱陶しい。
 どーせオレがくれたから~とか言うんでしょ。わかってますよ。
「おう! だって添がくれたものだからな!」
 はい正解。友だちがくれるならなんでも嬉しいもんねと心中でせせら笑いながら、「喜んでもらえてうれしいな~」と出力していたところ、ふとイタズラを思いついた。
「オレがくれるならなんでもうれしいんだ」
「? ああ! 添が……その、オレに、って選んでくれたのが、すごく嬉しくて」
「へー。じゃあさ」
 ベッドから降りてするん、と犬の懐に潜り込んで膝の上に乗るも、その拍子に犬の手からぬいぐるみと手入れ用のブラシが転がり落ちる。
 目を見開いている犬のお綺麗な顔はどんな距離から見ても素晴らしい造形だ。肌もキメ細かくて手触りがいい。
「むぇ。て、てん?」
「オレがこーしたい、って練牙さんを選んだら……喜んでくれる?」
 なんてね。ウブで純朴なわんちゃんには刺激が強すぎたかな? きっとあと数秒したら顔を真っ赤にしてなに考えてんだとか大騒ぎするに違いない。そしたら冗談ですよーと言ってやれば、
「オレ、を……?」
「ん?」
 顔を覗き込めば不安げに揺れる二色。表計算ソフトで全てのセルを結合してファイルの数式を破壊し大鹿に叱られてる時でもこんな顔はしない。
 とかなんとか思っていると、額をそ、と撫でられる。
「あの、練」
「添……ムリしなくていいんだぞ?」
 あ?
「添は、かっこよくてすごくモテモテなんだから……オレをムリに選ばなくても、大丈夫だからな」
 何言ってる? この犬。
「オレはさ、添がこうやって優しく話してくれて、いっぱい友だちしてくれてるだけんぐ?!」
 ――これ以上、聞きたくない。
 そんな気分に蹴飛ばされて反射で口を塞いだ。
「もが~! むぐ! うぐー!!」
 いや色気無。シゴトでターゲットの口塞いだ時だってこんな情けない声出さないけど。
「~~~ぷはぁ! こ、こら添! こ、こ、こんなこと、好きな人だけんぐー!」
 うるせ~~~。
 いやいつの時代の人だよ。呆れてものも言えないよね。現在進行形で言えないようにしてやってるけど。
「むぁ! て、てん?! どうしたんだ?」
「……気分です」
「はぇ?」
 ああ、馬鹿らしい。
 犬の間抜け具合も、人の気持ちが微塵も分からないバカさ加減も。
 そんな犬の不安そうに揺れる二色にぐらつかされた自分も、それが消えてどこかスッキリしている自分も。
「練牙さんのせいです」
「えっ?!」
「だから今日の飲み奢ってくださいね」
「え、えっ?! ごめん……?」
 わかんないまま謝んなよ。だからそんななんだろ。
 腹立ち紛れに、八の字眉の情けない顔にデコピンした。