どうやら×××××っぽい
アイス買いにコンビニ行きませんか、と気まぐれに声をかけたら案の定尻尾振って飛びついてきた。
コイツはオレとそれっぽいことをするのに過敏なまでに反応する。取りこぼしたら終わる、くらいに。凪や幾成相手には普通に映画見に行ったり話したりするのにね。
第一、コイツは別にコミュニケーションができない訳じゃない。大鹿相手がおかしいだけ。そもそもできない奴は芸能人なんてできないだろう。いくらコイツの言うマネジが有能だとしても、最終的に評価されんのは本人なんだから。
「(でもなー)」
今隣を歩いている犬はこっちをチラ、と見ては目を逸らし、数分経ったらまたこちらに目線を向ける。視線って結構分かりやすいんだよ?知ってる?
何か話したいのは分かるけど、そんなにオレに言いにくいことを話そうとしてるのかな。構ってやってもいいけどこれですごくどうでもいいことだったらそれはそれでムカつくんだよなー。
うろうろする視線をテキトーにスルーしながら目的地に到着。アイス売り場に行ってのぞき込む。コイツのことだからお高いダッツとか選ぶのかな。それともオレとわけっこしてみたい、とかでパピコとか選ぶのかも。あー、それかもしれないね。ぽいことしたいけど、嫌がられないかな、みたいな。うわありそー。ホントしょうがないなこの犬は。
「練牙さん何にします?」
「ひゃえっ?!」
「声デカ。アイス買いに来たんですから、早く選びましょ」
「お、おう!えっと……」
ようやく普段くらいの反応になった犬はアイスケースを見てうんうん唸る。わかってますから、早く選びなって。
「うぅ……じゃ、じゃあこれ……いや待ってくれ、こっちも……」
「練牙さーん、アイスは逃げないけどオレは普通に帰りますよ?」
「ぁえっ!ま、待ってくれ、今決めるから……って添もう決めたのか?!」
「ええ、練牙さんがうにゃうにゃ言ってる間に」
「わ、悪かったなうにゃうにゃ言ってて!え、どうしよう……添は何にしたんだ?」
オレはにっこり笑って練牙さんの額を小突く。
「はにゃ!て、添……?」
「先買ってきます。オレ外でタバコ吸ってるんで、早く決めてね」
キャンキャン鳴く犬の声を背に、オレはセルフレジに向かった。
◇
犬がコンビニから出てきたのは、オレが二本目に火をつけるかどうか考えていた所だった。
「お、お待たせ……」
「そーですねー」
「ごめん……どれにするか迷っちまって……」
気まずげに謝る犬。いつもピンと立っている犬耳が元気なく伏せられているように見える。まあ反省してるならいっか。
「んじゃ帰りましょ。アイス食べながら」
オレは持っていたパピコを折って犬に手を差し伸べる。
「……!おう!」
犬はうれしそうにアイスを取って、また並んで歩く。
「そういやなんでさっき変だったんです?」
「へ?」
「コンビニ来る時。なんか言いたそうだったでしょ」
犬はエスパーを見つけたみたいに目をきらきらと輝かせている。いや、わかるでしょそりゃ。
「すごいな添……!」
「あっはは。どーも。……で?何だったんですか一体」
犬が手をにぎにぎと開いたり閉じたりしてくすぐったい。
「……その。してなかったろ」
「はい?」
犬はアイスをきゅ、と握り直す。冷たそう。
「来る時、手。繋がなかった」
「……。…………」
は?
「添もそういう時もあるよな、って。でも……」
「練牙さん」
アイスで塞がっていた手ごと握る。
「練牙さんは、手繋ぎたかったんですよね」
「はぇ?で、でも」
「でもじゃなくて。オレと手繋ぎたくて、何か言おうとしてたんでしょ?」
「………………」
犬はたっぷり五秒ほど黙って考え込んで。
「うん……だって、」
ーーオレ達、コイビト同士なんだろ?

