添練ワンドロアーカイブ

Novels

涙なしにはかたれない

「う……ひぐ、うぅ……そんな、そんなぁ……」

今日は練牙のリクエストで映画鑑賞。『劇場版・ワンワンパラダイス〜闇ドッグ・ブラックカイダーの秘密!〜』を見に来ている。ワンパラらしい、可愛い犬達が元気に大活躍する話、なのだが。

「練牙さん、大丈夫ですよ。シバ太郎はこんなところでし……いなくなったりしませんって」

「でも、でもシバ太郎は土佐之助を爆発から、庇ってぇ……」

そう。

なんとメインキャラ、もといメイン犬のシバ太郎が、映画オリジナル犬の土佐之助を庇って闇ドッグの攻撃をモロに受け爆発に呑まれてしまい、なんと、皆がシバ太郎へ遠吠えするところで映画は終わってしまったのだ。

「大丈夫です練牙さん、シバ太郎がし……倒れてるところが出てきたわけじゃないですから」

「……ほんとか?でもすげぇ爆発だった……」

知らねえよ次回を待てよ、と口まで出かかったが、この後ふたりで飲みに行く予定なのだ。こんなベチョベチョの状態もまあ、添にとって多少面白くはあるが、このままでは飲みの間どころかこの後ずっと爆発に飲まれたシバ太郎の話をされるに決まっている。ワンパラや映画が好きならともかく、練牙の付き合いで見に来ただけでワンパラに特別な感情は持っていない添にとって、しょげた顔を見せられながらしょげた話題をループされるのは避けたいところだ。

「練牙さん。シバ太郎は勇敢な犬の勇者なんですよね」

「そう……シバ太郎はすげえいいやつで、皆の憧れで……うぅぅ……」

「なら、皆が悲しむようなことをするわけないと思いません?」

「う?」

綺麗な顔を涙と鼻水でびちょびちょにしている練牙に、添は笑いを何とかこらえながらそれらしい言葉を作っていく。

「シバ太郎は、土佐之助を助けるために闇ドッグの攻撃を敢えて受けました。でも皆を悲しませない勇敢なシバ太郎なら、皆を助けるために必ず戻ってきてくれるハズです。だってシバ太郎は、誰かの涙を放っておけない、皆のヒーローなんですから」

見に行こうと言われた時にひと通りのワンパラ知識を叩き込んでおいてよかったな〜と添はそれらしいことを話して底辺まで落ち込んだ練牙の心を引き上げようとする。

「そっか……シバ太郎は、皆のひーろー……」

「ね、ヒーローは簡単に倒れませんよ。大丈夫です」

添はさりげなくポップコーンについてきたお手拭きを練牙に渡すと、ぐしぐしと顔を拭き、練牙はなんとかいつもの笑顔を作る。

「そう、だよな……オレ達がシバ太郎を信じねえと……」

しれっと巻き込まれたが、そもそも映画に付き合った時点でという話だ。添は何とか持ち直した練牙を見て肩をすくめる。

「落ち着きました?」

「ん……ありがとな、添」

「いーえ。ほら、セレブタレントの練牙さんがワンパラの最新作見てボロ泣きしてるの、人に見られたらマズいかもなーって」

「へぁ?!な、なんで今そんなこと言うんだ添!」

上着を脱ぎ慌てて顔を隠す様はまるで悪戯がバレて主人から隠れようとする犬のようで。

「……っはは!あはははっ!」

「わ、笑うなあ!オレはホントに悲しくてだなあ!」

「(どーでもいい映画に付き合わされてどうなる事かと思ったけど、まさかこんな面白いことになるとはね)」

飲みはすこしいい所にしてやろう。添は上着を頭に被った練牙の手を軽やかにかわしながら、気分よく今夜のご飯処を予約した。