添と久しぶりに飲みに来れて、オレはいつもよりふわふわしていた。天にも昇る思い、ってこんなのかな。天になんて行ったことないけど、多分そう。
添もなんだか楽しそうだ。おもてなしの時もそうだけど、目の前の人が喜んで、笑ってくれてるとこっちもあったかくなってくる。
「ねえ、練牙さん」
たこわさをつついていた添が箸を置いて、オレの手をつつ、となぞる。くすぐったい。
「この後、どーします?」
この後ってなんだろう。二軒目かな。
「どう…って? 何かするのか?」
「そ。オレ、今日はまだ練牙さんと一緒にいたいなーって、思うんですけど」
すごく嬉しい。でも結構酔っ払っちまったし、結構ふわふわしてるし、一応明日は休みだけど。ていうかふたりで帰るし。と半分くらい減って泡の消えたビールを眺めていると、
『練牙さん。二人っきりで、イイコトしましょうよ』
添のその言葉で、どうしようかなって思いがすうっとなくなっていく。
やっぱり、行きたい。添の言う良い事が何かは分からないけど、友だちの添が言うなら、きっとすごく良い事だと思うし。
「ん…」
オレは手の甲をなぞっている添の指をそっと握って返すと、添は嬉しそうに、楽しそうに笑った。
添が嬉しそうに笑ってると、オレも嬉しい。
◇
お酒でふわふわの中で、オレは添と夜道を歩いてる。いつも帰る方とは真逆で、どんどん灯りが少なくなっていくからちょっと不安だけど、添が手を引いてくれるから大丈夫だ。
いつだって添はオレのことを助けてくれる。最初からずっとそうだ。嬉しいけど、いつかちゃんとお礼したい。いいですよって言われるけど、甘えるだけじゃダメだと思うんだ。
「こっちですよ」
そして今日も足元がおぼつかないオレを、添は優しく支えながら歩いてくれる。やっぱり、お酒強くなりたいな。こうやってふわふわするのも楽しいけど、もっと添と話したいし、迷惑かけないようにしたい。
そうして着いたのは、暗闇の中で光ってる建物。H、O、まで目に入ったけど、そのまま入ったからよくわからなかった。中はすこし薄暗くて、オレたちと同じタイミングで出ていく人たちの背中が逆側の出口に見えた。ひっついてて、すごく仲良さそうだ。
「ちょっと待っててくださいね」
添が足元のおぼつかないオレを支えて、ソファに座らせてくれる。そのまま添はよしよし、って頭ポンポンしてから光ってる壁に行ってなんかして、受付みたいなところで多分、お金払ってた。あとでワリカンしなきゃな、ってふわふわした頭でぼうっと見てたら、添がすごく優しい顔して、座ってるオレの手を取ってくれた。
「お待たせしました。行きましょ」
オレはその手を離さないようにきゅっと握り返して、そのまま二人で奥にあるちっちゃいエレベーターに乗った。
◇
着いたのはビジネスホテルよりもこじんまりとした部屋。でも入ってすぐにあるベッドはおっきかった。ツインだっけ、ダブルだっけ、いつもどっちかわかんなくなっちまう。奥にはお風呂もあるみたいで、ドレッサーや小さい冷蔵庫みたいなのもあった。
もしかして、酔っ払ったオレを寝かせてくれるのかな。申し訳ない気持ちとありがたい気持ちが混ざりあってちょこん、とベッドのへりに座ると、
「んむ」
やわらかいものが口に当たった。
「むぇ?」
なんだろう、ペットボトルの水にしては温かいし柔らかい。目の前も暗いし。そんなことを酔った頭で何とか考えようとしてたら、いつの間にか半開きになってた口にぬるっと何か入ってった。
そういえば添何してんだろ、先に入ったはずなのにいなくないか?と考えが転がっていったところで、
オレはようやく、添とキスしてることに気づいた。